The Devil's fruits

1. シャンクスと悪魔の実 01/03/15
 16巻のSBS(88p)に出ている、ワンピースのキャッチフレーズ…「敵も味方も異常者ばっか。」
これは、シンプルでいてなかなかマトを得ている至言だと思う。

 で、尾田先生はこの返答として、
「読者も作者も異常者ばっか。」いや作者は正常だろ!!
 …などとひとりツッコミを展開しているが、そもそもすべての「異常」を生み出している元凶が自分にある、という事実を完全に棚に放り投げた、例のごとく無責任な回答であると言わざるを得ない。

 で、まーとにかく、グランドライン、リヴァースマウンテンといった、地理上の異常設定と並んで、ワンピース界の「異常」ぶりをさらにひきたててくれているアイテムが、主人公ルフィの「ゴムゴム」に代表される、多種多様な「悪魔の実」であろう。

 ところで、悪魔の実に関して、一見何げないことでありながら、意外に大きな含みがあるのかもしれないと思われるのが、すでにあちこちでよく指摘されていることであるが、1巻、第1話において、シャンクスが、ルフィの食べたのが「ゴムゴムの実」で、その効力がどんなものであるか、事前にくわしく知っていた、という点である。

 しかも、ラッキー・ルウが、メロンに似た形状のゴムゴムの実の外観を正確に写した絵(誰が描いたのかは知らないけど) を見せている(1巻24p) あたりからしても、おそらく外見の形状で、それが何の悪魔の実かを判断できるくらいの知識を得ていた、ということだ。

 しかし、そのシャンクスは以前、まだ海賊見習い時代に、同僚のバギーが同じく悪魔の実を食すシーンにも立ち会っている。

 この時の「バラバラの実」は、確かにゴムゴムとはまた異なり、むしろパイナップルに似た形状をしていた。だが、この当時はシャンクスもバギーも、彼らの頭だった海賊船の船長も、ただ「悪魔の実」というだけで、その名前や効力はまるで知らなかったらしい。

 というのも、バギーが演技でニセの実を食べた時、仲間の海賊が「体に何か変化はあるか?」と尋ねているくらいであるから、それが「バラバラ」であるということは誰も認識しておらず、「カナヅチになるらしい」というのも噂として聞き知っていた程度のもので、せいぜい「売れば一億ベリー」というくらいしか、わかっていなかったのだ。

 …となれば。シャンクスは、見習いを卒業して自分の船を持ち、海賊団を結成し、ルフィの村にたどりつくまでに、おそらく確実に一度はグランドラインにも足を踏み入れ、そこで「悪魔の実」に関しての詳細な知識を得る機会に遭遇した、ということだろう。

 ただしもちろん、シャンクス自身は、1巻当時でちゃんと泳げていたのだから、「悪魔の実」の実態を知り、それを直接手にする機会を得てもなお、人外的な能力獲得のためにそれを自分で食べる、といった安易なことはしていない。

 このあたり、悪魔の実の能力者であるということに溺れ、その特殊能力に奢り、反面自らの肉体的・精神的な鍛練をおざなりにしてしまっている(…と私には思えてならないのだが) バロックワークスのオフィサーエージェントらと、明らかに一線を画すところであろう。

 ところで、シャンクスらによって東の海のフーシャ村まで持ち込まれた、「ゴムゴムの実」は、ラッキー・ルウが「敵船から奪った」(1巻24p) と言っている。


 四つの外海のうちでも、とくに最弱の「東の海」での「敵船」程度に、モーガン曰く「噂に聞く悪魔の実シリーズ・海の秘宝」があったとは、ちょっと考えられない。

 それにだいたい、あれだけの強さを誇る赤髪海賊団に、「敵」とまで呼ばせるだけの海賊が、東の海に存在していたとも、到底思えない(ヒグマ率いる山賊団のように、シャンクスらの実力を知らずに襲ってきた連中はいたかもしれないが、後日、彼らがヒグマたちを語る場合、あれを「敵」などと呼ぶだろうか?)

 つまり、「敵船と戦ってゴムゴムの実を手に入れた場所」は、ほぼ確実にグランドライン内であろうと思われるのだ。だが、そうなると、シャンクスがわざわざグランドラインから東の海まで「ゴムゴムの実」を持ち運んできた、その意図はどこにあるのだろうか?

 前述の「売れば一億ベリー」を当て込んで、どこかで売り払うつもりなのだったとしても、悪魔の実の外観やその存在すらよくは知られていない東の海より、グランドライン内の文明国のほうが、よほど認知度は高いのだから、ずっと高値で売りさばけそうに思える。

 あるいは、べつにフーシャ村でどうこうするつもりはなく、そのまま保管しておいて、村を発った後で、また何かしらの処遇を考えていた、という見方もあるだろうが、それにしては、あれだけ危険な・また高価な宝物を、これ見よがしに宝箱に入れ、鍵さえもかけず、子供も出入りする酒場に持ち込んで、誰も監視しないまま放置していた(その結果、ルフィが誤って食べてしまった) …というのも、どこか妙な話だ。

 で、私は一時、シャンクスの正体は、実は悪魔の実をグランドラインから持ち出しては、それを適当な人間に食わせて、グランドラインに巣食う中央集権(つまりは、世界政府)に対抗しうる人材を育成する、いうならば悪魔の実を外海に配り歩く伝道師なのではないかと疑ったことがあった。

 またそれは、お宝収拾にも襲撃・略奪行為にも、さして興味・関心のなさそうなシャンクスが、何故に海賊なんてものを営んでいるのか、その謎を解くひとつの鍵じゃないかと思っていたりするのだが…はて、さて。


2. バギーと悪魔の実 01/03/15
 ルフィの「ゴムゴムの実」の件ではっきりしているのが、悪魔の実は、ただそれを「食べた」だけでは、本人にその認識は植えつけられない。ルフィも、シャンクスに引っぱられて手が伸びるまで、自分が能力者になったという自覚はなく、とくに体の変調も感じていなかった。

 では、ルフィとちがい「悪魔の実」ということは知っていたが、効力は知らずに食べてしまったバギーの場合。

 彼がその後、自分に植えつけられた能力が何であったのかを認識するまでに、どれほどの辛酸をなめ、苦悩したかは、容易に想像して余りある。

 というのも、彼がそれを認識するためには、ルフィのように「引っぱられて、伸びた」程度ではすまず、さらに進んで、「体を切って、分断された」という域にまで遭遇する必要があったのだ(もしくは、自分の意志で体を分裂させようと意図して、それに体が反応したか…だが、普通の人は、まずそんなことは考えないと思う)

 …それを思えば、バギーのシャンクスへの歪んだ怨念も、至極まっとうなものであるような気もする。もちろん、こうなった最大の元凶は、海賊仲間たちを出し抜いて、悪魔の実を独り占めしようとした、そのキタナい欲望に発するものではあるが、内情はどうあれ、あの時にシャンクスが二度も、フェイントをかけて現れてこなかったら、バギーは名前すら知らない悪魔の実を飲み込むことも、その実の効力がなんであったのか確認するまで、死ぬほどの苦労をする必要もなかったのだ。

 まあ、後日、彼自身が語っているように、
「そしておれはフッ切れた!! 海中がダメなら、海上の全ての財宝をおれのものにしてやるとな!! このバラバラの能力で!!」(3巻45p)
 つまり、その実の効力を知って、それを逆に海賊稼業に生かしてやろうとの決意を固めてくれたのは幸いであった。

 というか、そもそも海賊なんてのは、これくらい「転んでもタダでは起きない、タフな人種」でないと、つとまらない職業なのだろうが。

 ところで、バギーに関連しての余談になるが、彼の「バラバラ」は、自分の意志で制御できる範囲に「地に着いた一点を軸にして、直径200バラバラ」(7巻108p)という制限はあるものの(その「地」というのが、陸上のみでしかダメなのか、船上の甲板でもOKなのかは、また別の議論になりそうだが)、「まったく別々の場所に、体パーツを完全に切り離して存在できる」という現象は、数ある悪魔の実のうちでも、かなり異例である。

 で、そこから生じる、重大かつ奇妙な疑問。
 頭と手足パーツだけの小さなバギーの時、ガイモンさんの島やアルビダの船で、彼は酒やごちそうをふるまわれていたが、ではその食べた食物や水分は、頭パーツを通過した後、どうなっていたのだろうか??

 バギー自身も制御範囲外にあった、クマテ族の住む島の、縛られた胴パーツに、それこそ「悪魔的な力」によって転送されていたということだろうか??(…あと、もしそうだとしても、その後の消化や排泄は…以下略)

 また、たとえば呼吸ひとつするにしても、胴体、腹の中におさまっている横隔膜を上下させないことには、生物学的に到底不可能なのであり、となればミニバージョン時のバギーは、やはりはるかかなたの島にあった胴パーツの運動を頭パーツにまで連動させて、実質上、何不自由なく呼吸をしていた、ということになるのだろう。

 …ところで、バギー、ルフィのほかチョッパーあたりは、おそらく、それが悪魔の実であるという認識や、その効力すら知らずに、いうならば本人の意図とは無関係に、不本意に食べてしまったと思われるのだが、バロックワークスの面々や、スモーカーあたりは、どうも、自らその実の能力を欲して…つまり、あらかじめ実の名前や効力や、カナヅチになるリスクも重々承知のうえで、自ら進んで食したのではないだろうか…という気がしてならない。

 というのも、やはり各人がそれぞれ、自分の名前や趣味・適性に合った能力を得て、その力をフルに活用することに楽しみを見出してる、ように見えるからだ。

 スモーカーの「モクモク」はその極みであるし、あとMr.3も、彼が思い描く芸術観 (かなり、歪んでますガネ) を生かすのに、「ドルドル」ほどふさわしい実もないのである(…というか、あのような意図がなければ、おそらく誰も欲しない実だと思う、「ドルドル」って)

 つまりは…グランドライン内にいる、または容易に双方を行き来できる装備を持っている組織(よーするに、海軍)の人間には、けっこう、悪魔の実についての予備知識があらかじめ与えられている、ということかもしれない。

 そして中には、上記で勝手に予測したシャンクスとまったく対極に位置する、つまり手に入れた悪魔の実を、グランドライン内で、野望実現のためにさらなる特殊能力を欲する人間、あるいは組織(この場合は、海軍のほか、バロックワークスとか、白ひげ海賊団とか…だろうか) に売り歩く、行商人のような人間も、ひよっとすると存在しているのではないだろうか。

 そもそも、「売れば一億ベリー」という一定の評価基準があるということは、それを金で売買するシステムが、確実にどこかに存在している、ということであろう。

 「悪魔の実を見つけたはいいが、さすがに自分で食う気まではしない」という、やや消極的・堅実な海賊が売りに出した実が、その流通ルートに乗り、逆に「自身の野望実現のため、カナヅチになってもいいから何らかの特殊な能力を得たい、大金を積んででも悪魔の実を入手したい」とたくらむ、野心家たちの手に流れる。

 …案外、グランドライン内の能力者の分布は、そういった各人の思惑と流通経路が絡み合った上に、需要と供給のバランスを保って成立しているものなのかもしれない。





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