1. 出生の謎 00/09/07
ゼフさんに拾われた(…というか、強引に押しかけてついていった?) 後の、彼の経歴は、はっきりすぎるほどはっきりしている。
だから問題は、それ以前、あんな幼い身で客船コックの見習いをしていた、その少々特異な境遇はどこから来たのか? …というものである。
考えられる仮説としては、だいたい以下のようなものが挙げられるだろう。
●親が客船のコックとして乗り込んでいて、サンジもまた一緒に(本人の意志によるものか、あるいは親の希望かは知らないが)
見習いとして乗せてもらっていた。
●純粋に、本人の意志 (オールブルーまたは海のコックという職業に対する憧れ)で、コック見習いを志望して、乗り込んでいた。
●客船内に、捨てられたか置き去りにされたかした「みなし子」で、なんとなくコックたちに可愛がられて、そのまま厨房で育てられていた。
…私が個人的に有力視しているのは、やはり最後の説である(笑) よーするに、気分は「海の上のピアニスト」…ならぬ、「海の上の料理人!!」だ。
「実の親」や「家庭」についての記憶などまったくなく、物心ついた時にはすでに船上の厨房にいたという、まさに海のコックになるべくして生まれた男!!
で、余談だが、あの客船オービット号は、回想シーンを見る限り、客層はほぼ、金銀宝石で身をつつんだ「上位階級」、つまり王族貴族級の人間であり、いわゆる「タイタニック号」などと同様の、富裕な身分の者しか乗れない「豪華客船」であったことは、まちがいないように思う(ゼフさんが、略奪のターゲットと選んだのも、必然といえば必然の結果かも)
…ということは、もしサンジが船内で客に捨てられた子だとすれば、その生まれは案外、高貴な身分だったのかもしれないという仮説も成り立つ
(ただしもちろん、正統な嫡子ではなく、何らかの裏事情があったゆえに忌まれた、とかね)
そして、おそらく、サンジの女性に対しての騎士的な振る舞い等も、そういう礼節にうるさい人々と接する機会が多かったゆえに、自然と身につけたものではないかと考えられる
(豹変ぶりの見事さと普段の口の悪さは、おそらくその反動による副作用だろう)
2. サンジ・ゼフは、なぜ足場を蹴り砕かなかったのか 00/10/16
サンジの戦闘技といえば、言わずと知れた「蹴り技の達人・赤足のゼフ」直伝の「キック」であり、その威力のほどは「木製バットを21本、まとめて蹴り砕く」という、よくわからない単位で21バット。
それは、ルフィに上に落とされた巨大な岩盤を一撃で蹴り割ったシーン(10巻33p)でも、証明されている。
しかし…ひとつの疑問がある。
あれだけのキック力を持っていたのなら、なぜ彼は、アーロンパークでの「ゴムゴムの風車」の後、ルフィが海に落とされる前にさっさと周辺の足場を蹴り砕いて、ルフィの足を抜くことを思い立たなかったのだろうか?
ウソップにルフィを引っぱらせるより、よほど迅速かつ確実に、救出できたのではないかと思えるのだが。
「騎士道」云々を語りかけてきたクロオビについ注意を向けさせられてしまったため、そこまで気を回すことができなかった、ということかもしれないが、それにしても、ルフィが石ごとアーロンに持ち上げられ、口の中にパンチを突っ込むなどして抵抗していた間に、飛び蹴りに移るくらいの猶予はあったのではないか。
だが、まあ…作者の本音としてはおそらく、
「主人公のルフィとアーロンの決闘を最後のトリに持っていくため、またカナヅチのルフィを海に落とすという状況を作り上げて、ゾロ・サンジの戦闘に緊迫感を加えるためにも、ここであっさりルフィが救出されては、話の展開上、困る」というところであったろう。
この、「戦闘」そして「仲間」を、もっとも重要なテーマとして扱う少年漫画において、主人公側のキャラと敵キャラの間でどのように対戦を組ませ、勝敗を設定し、どの順序でカタをつけていくか、というのは、なかなかにテクニックとセンスを要する、重大な構築要素のひとつである(…と、思う)
で、そのあたりの作者の苦労は、VSクロ戦にも、如実に見て取れる。
最大のボスである、クロとの決戦をルフィが迎え討つのは、絶対に動かしようのない少年漫画の「お約束」だ。しかし、その前に彼の仲間たち、ゾロ・ナミ・ウソップの見せ場も、ひととおり作っておきたい。
とはいえ、彼ら4人を同時に戦場に立たせたのでは、ルフィとゾロだけが戦って、ナミとウソップはその背後にさがってしまい、戦列に加わらせることが難しくなるだろう。
そこで、開戦にあたり「敵の上陸地点が実は別の場所だった」という設定を出して戦場を移動させ、それによってルフィとゾロの合流を遅らせて、先にナミとウソップを前線に出すように細工した。これが、まず第一段階。
で、先に到着した2人ではどうにもできない、絶体絶命のピンチに陥った瞬間、ルフィとゾロがやってくる。これが第二段階。
しかし、トリを飾るルフィの決戦の前に、今度はゾロの見せ場をつくらねばならない。そのためルフィには、催眠術でしばらく眠っていてもらおう…と、これが、第三段階。
で、ゾロの戦闘になんとかカタがつきかけた頃、やっとルフィが目を覚まし、完璧にお膳立てがととのえられたところで、最終決戦に突入する…
…と、まあこんな具合である。戦闘のたび、ルフィが毎度毎度、眠らされたり拘束されたりして戦闘参加が遅れるのは、本人の ミス・ボケによるところも大きいが、その裏には「主人公の決戦は、何としても最後にとっておきたい」と苦心して裏工作する、作者の意図が働いているのである。
…で、ずいぶんそれてしまった話を、ここで「蹴り」に戻す。今度は7巻、サンジの回想シーンでのことなのだが。
嵐の後の漂着後、ゼフはサンジに向かって
「この島には木の実もなく、動物もおらず、海には魚くらいいるだろうが、岩が波にえぐられてねずみ返し状態になっており、よって一切食料は手に入らない」と説明、打ち上げられたわずかな食料だけを頼りに、じっと助けを待つしかない、と言う。
この後は、ワンピファンならもはや説明の必要もない、ご承知の通りの展開に突入していくわけなのだが、ここではあえて、その感動シーンを、少々ひねくれた角度から検証していきたい。
アーロン編にて、サンジは海中に投げ込まれたルフィの足枷を、なんなく一撃で蹴り砕いてしまった。
クロオビによれば、「陸でのキック力は半減だな」ということなので、海中でのサンジのキック力は、まあ10.5バット程度だった、ということになるが、それでもあの破壊力なのだ。
で、現役当時のゼフさんが、どの程度のキック力を有していたかは定かではないが、おそらく現在のサンジと同格か、それを上回るくらいはゆうにあっただろう。
アニメでは、サンジを海中で助ける際に、すでに足を失っていたゼフだが、原作では足を食うために自ら切り落とすまで、その「赤足」は健在だった。
ということは…そう、「ねずみ返しになっている岩」など、往年の「赤足のゼフ」であれば、海中からでも余裕で岩場を蹴り砕いて、岩上にはいあがるくらいできたのではないだろうか?
いや、海に飛び込む以前に、足もとの岩場を少し蹴り崩しておけば、そこから海へ入って、魚を取って戻ってくることもできたはずで、「食料は一切手に入らない」と悲観する必要などなかったのではないか、ということだ。
彼が、そのような強行手段に出なかった理由として、考えられるのが、「蹴り」のパワーを抑制することが難しく、ゼフさんが「赤足」をふるった場合、あの小さな岩場が跡形も残らず海に沈んでしまうおそれがあったため、あえて「蹴り」を自制した、というものだ。
だが、たとえ「蹴り」を封印するとしても、例えばゼフさんが着ていた服や、食料・宝を入れていた袋の布地を切り裂いてロープを作り、サンジ(チビナス)を海へ放り込んで食料を取りに潜らせ、あとはそのロープにつかまらせて引き上げる…といったふうに、「足を食う」という悲愴感ただよう暴挙に出る前に、まず「ねずみ返し」を克服する手段も、いろいろと考えられたのではないだろうか??
もし、あの時点で彼ら2人が、互いに生き抜くために知恵を出し合い、協力していたならば、あの飢えと恐怖に満ちた85日間も、ちょっと変わった、スリルあふれるサバイバル体験となっていたのかもしれないのである…